
心の安定を考えるとき、睡眠や運動と同じくらい大切なのが「食事」です。
食べ物は単に体を動かす燃料ではなく、気持ちや感情を左右する重要な要素です。
なぜなら、食べ物から得られる栄養素が脳の働きやホルモン分泌に直結しているからです。
例えば、血糖値の急激な上昇と下降は、気分の波を大きくします。
甘いものや白米、白いパンなど精製された炭水化物を一度にたくさん摂ると、一時的に元気になったように感じますが、その後急激にエネルギーが落ち、だるさやイライラを招きやすくなります。
逆に、食物繊維を含む野菜や雑穀、良質なたんぱく質をバランスよく取り入れると、血糖値が安定し、気分も落ち着きやすくなります。
また、脳の働きに欠かせないのがオメガ3脂肪酸です。
青魚(サバ、イワシ、サンマなど)やナッツ、亜麻仁油に含まれるこの脂肪酸は、神経細胞の材料になり、うつ症状の予防や集中力の維持にも役立つとされています。
日本人の食文化はもともと魚を取り入れる習慣があったので、現代でも意識して食卓に加えるとよいでしょう。
「何を食べるか」と同じくらい大切なのが「どう食べるか」です。
早食いをすると満腹中枢が働く前に食べ過ぎてしまい、体が重くなるだけでなく、消化器官に負担をかけてしまいます。逆に、ゆっくり噛んで味わいながら食べると、脳が満足感を得やすくなり、必要以上に食べなくても心が満たされやすくなります。
これは「マインドフルイーティング」と呼ばれる方法で、食べながら心を落ち着ける効果も期待できます。
さらに、食事のリズムも心の安定に関わります。不規則な時間に食べたり、夜遅くにたくさん食べたりすると、体内時計が乱れ、睡眠の質にも悪影響を与えます。結果として心身が不安定になりやすいのです。
朝は軽くてもよいので何かを口にし、昼はしっかり、夜は控えめにというリズムを守るだけで、体も心も自然と落ち着いていきます。
もちろん、食事は「楽しみ」でもあります。無理に制限したり、栄養ばかりに気を取られたりすると、かえってストレスになります。
たまには好きなものを食べて「おいしい」と感じることも、心の栄養です。大切なのは、日常のベースを整えて、そのうえで楽しみを加えるというバランスです。
つまり、心が安定する食べ方とは、「体にやさしいものを選ぶ」「ゆっくり味わう」「リズムを整える」という3つの柱に尽きます。
それは特別な知識や難しいテクニックではなく、ほんの少し意識を変えるだけで実践できることばかりです。
毎日の食事を整えることは、自分の心を整えることにつながります。